社会的養護

児童の権利に関する条約:歴史と全文まとめ

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保育士試験必出の「児童の権利に関する条約」とは

保育士試験には、毎年と言っていいほど「児童の権利に関する条約」について出題されています。保育士を目指す人にとって「児童の権利に関する条約」の認識は、必然といっていいほど理解しておくべきものです。

 

「児童の権利に関する条約」とは

「児童の権利に関する条約」とは、1989年国連総会にて採択された子どもの権利に関する条約です。日本は1990年にこの条約に署名しています。この条約の目的は、世界中の児童が貧困や飢え等の危機にさらされていることを懸念し、世界の児童の人権や保護を推奨するルールとして作成されました。ここでいう児童とは、18歳未満のすべての者をいいます。

 



児童の権利に関する条約ができるまでの歴史

「児童の権利に関する条約」ができるまでに、歴史的な流れがあります。こどもの権利に関する制度の経過は、保育士試験に頻出ですのでしっかり理解しておきましょう。

歴史1:受動的権利ができて、さらに能動的権利ができた

児童権利の制度なりたちについて、まず「受動的権利」ができて、その後「能動的権利」が出来上がっています。

受動的権利とは

受動的権利とは、児童が保護者や国・行政から成長や発達を保障される権利のことです。「守られる」という受け身な権利のこと。児童権利の制度は、まずこの受動的権利から成立されていきました。

能動的権利とは

能動的権利とは、子ども自らが自分の意見を発信できる権利、自分で考えて行動する権利のことを言います。こどもの積極的な側面を能動的な権利として認めるのが、この能動的権利です。

 

「こどもの権利」の認識ができあがった発端

子どもは守られ、自ら考え発言する人権がある。歴史的に強制的な長時間労働や、貧困や戦争で弱い立場にあった子どもたちの人権を見直し、制度が見直されていきました。

20世紀以前:社会思想家 エレン・ケイによる児童権利の主張

20世紀以前、こどもは長時間労働を強制されたり、教育をうける権利がなかったり、教育や成長に関して「保護される」立場にありませんでした。当時の子どもを取り巻く社会問題に対し、スウェーデンの社会思想家エレン・ケイは、児童の尊重・教育について主張を唱えました

 

その後、社会的弱者であり、成長過程にある子どもは「保護される」存在である認識が広まっていきました。これが受動的権利のはじまりです。

1924年:「児童の権利に関するジュネーブ宣言」が発足

1924年(大正13年)、第一次世界大戦で多くの子どもが命をなくしたこともあり、国際連盟より「児童の権利に関するジュネーブ宣言」が発足されました。

これは「人類が児童に対して最善のものを与えるべき義務を負う」という責任を認め、人種、国籍、信条に関するすべての事由にかかわらず、こどもは飢えや危機から守られるべきである、という目的のために作られました。

 

1947年~1951年:日本では、児童福祉法・自動憲章が制定

ジュネーブ宣言発足後、1947年(昭和22年)に児童福祉法、1951年(昭和26年)に児童憲章が制定されました。

児童憲章とは、全ての児童において、社会の中でよい環境で育てられること、大切にされる権利についてまとめた法律です。教育を受ける権利、職業指導を受ける権利などが含まれています。

 

1959年:国際連合から「児童の権利に関する宣言」が採択される

1959年、ジュネーブ宣言を拡張させた「児童の権利に関する宣言」が、国際連合から採択されました。5条で成り立っていたジュネーブ宣言から、「児童の権利に関する宣言」では10条へ項目が追加され、内容も充実させられました。その後の1989年、能動的権利である「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」が成立されました。

歴史2:子どもの権利の変遷(保育士試験頻出)

20世紀以前にエレンケイが子どもの権利を唱えてから、受動的権利がうたわれ、能動的権利が作られこどもの権利は変遷していきました。保育士試験では子どもの権利がどのように変遷していったのか、よく問われる傾向にあります。しっかり理解しておくようにしましょう。

 

子どもの受動的権利を認めた制度

  1. 1924(大正13)年:児童の権利に関するジュネーブ宣言
  2. 1951(昭和26)年:児童憲章
  3. 1959(昭和34)年:児童の権利に関する宣言

子どもの能動的権利を認めた制度

  1. 1994(平成6)年:児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)
  2. 2016(平成28)年:児童福祉法(2016年改正)

 



児童の権利に関する条約全文

 

外務省HPに掲載されている児童の権利に関する条約の全文です。

児童の権利に関する条約全文

 

特に第29条は覚えておきましょう。

 

第29条

1 締約国は、児童の教育が次のことを指向すべきことに同意する。

(a) 児童の人格、才能並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること。

(b) 人権及び基本的自由並びに国際連合憲章にうたう原則の尊重を育成すること。

(c) 児童の父母、児童の文化的同一性、言語及び価値観、児童の居住国及び出身国の国民的価値観並びに自己の文明と異なる文明に対する尊重を育成すること。

(d) すべての人民の間の、種族的、国民的及び宗教的集団の間の並びに原住民である者の理解、平和、寛容、両性の平等及び友好の精神に従い、自由な社会における責任ある生活のために児童に準備させること。

(e) 自然環境の尊重を育成すること。

 

 

 

引用元

外務省サイト



「児童の権利に関する条約」の要点

児童の権利に関する条約のテーマは、主に能動的権利を主張する権利条約です。つまり、児童の自ら訴え行動する権利を主張した内容に関しては、内容をおさえておきましょう。ポイントとなるのは、第3条:児童の最善の利益、第12条:意見表明権、第13条:表現の自由です。これらはこどもを取り巻く大人が努めなければならないことであり、保育士として必ずふまえておくべき条約です。頻出問題なので、しっかりおさえましょう。

 

第3条:児童の最善の利益

1 児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。

2 締約国は、児童の父母、法定保護者又は児童について法的に責任を有する他の者の権利及び義務を考慮に入れて、児童の福祉に必要な保護及び養護を確保することを約束し、このため、すべての適当な立法上及び行政上の措置をとる。

3 締約国は、児童の養護又は保護のための施設、役務の提供及び設備が、特に安全及び健康の分野に関し並びにこれらの職員の数及び適格性並びに適正な監督に関し権限のある当局の設定した基準に適合することを確保する。

 

第12条:意見表明権

1 締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。

2 このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。

 

第13条:表現の自由

1 児童は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。

2 1の権利の行使については、一定の制限を課することができる。ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のために必要とされるものに限る。

(a) 他の者の権利又は信用の尊重
(b) 国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護

 

 



児童の権利に関する条約:保育士試験対策まとめ

保育士試験をうけるにあたり、児童の権利に関する条約を理解しておくことは重要です。ほぼ毎年出題されており、点取り問題でもあります。児童の権利に関する条約に関する特徴は、条約のポイントと歴史です。

条約自体のポイント、能動的権利であることやその内容、また条約が作られるまでの歴史は出題範囲ですので、全体的に理解しておく必要があるでしょう。

 

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