保育士試験には、頻繁に「合計特殊出生率」について出題されます。合計特殊出生率とは、一人の女性が一生のうちに出産する子どもの予測数のこと。今日の保健衛生・少子化問題を理解するうえで、合計特殊出生率の理解は必須です。
この記事では、試験対策のポイントもふまえ、合計特殊出生率について詳しくまとめています。
合計特殊出生率とは~未来の人口を示す重要な数値~
合計特殊出生率とは、一人の女性が一生のうちに出産するであろう予測数。厳密にいうと「15歳~49歳の女性の年齢別出生率を合計したもの」です。この数値をもとに将来の人口が推測できます。
日本の人口を維持していくためには、2.07の出生率が必要と言われていますが、1975年(昭和50年)に2.0を下回ってから低下傾向で少子化となり、将来的に人口が減っていくことが予測されています。
日本の合計特殊出生率~時代の変化で見る出生率~
日本の合計特殊出生率は、1975年以降2.0を上回ることなく低迷し続け、少子化問題が深刻化しています。

By Aporon999 [CC BY-SA 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0)], from Wikimedia Commons
画像引用:
ウィキペディア「合計特殊出生率」
「1947年以降の合計特殊出生率」表を表示
1947(昭和22) |
2,678,792 |
4.54 |
1948(昭和23) |
2,681,624 |
4.40 |
1949(昭和24) |
2,696,638 |
4.32 |
1950(昭和25) |
2,337,507 |
3.65 |
1951(昭和26) |
2,137,689 |
3.26 |
1952(昭和27) |
2,005,162 |
2.98 |
1953(昭和28) |
1,868,040 |
2.69 |
1954(昭和29) |
1,769,580 |
2.48 |
1955(昭和30) |
1,730,692 |
2.37 |
1956(昭和31) |
1,665,278 |
2.22 |
1957(昭和32) |
1,566,713 |
2.04 |
1958(昭和33) |
1,653,469 |
2.11 |
1959(昭和34) |
1,626,088 |
2.04 |
1960(昭和35) |
1,606,041 |
2.00 |
1961(昭和36) |
1,589,372 |
1.96 |
1962(昭和37) |
1,618,616 |
1.98 |
1963(昭和38) |
1,659,521 |
2.00 |
1964(昭和39) |
1,716,761 |
2.05 |
1965(昭和40) |
1,823,697 |
2.14 |
1966(昭和41) |
1,360,974 |
1.58 |
1967(昭和42) |
1,935,647 |
2.23 |
1968(昭和43) |
1,871,839 |
2.13 |
1969(昭和44) |
1,889,815 |
2.13 |
1970(昭和45) |
1,934,239 |
2.13 |
1971(昭和46) |
2,000,973 |
2.16 |
1972(昭和47) |
2,038,682 |
2.14 |
1973(昭和48) |
2,091,983 |
2.14 |
1974(昭和49) |
2,029,989 |
2.05 |
1975(昭和50) |
1,901,440 |
1.91 |
1976(昭和51) |
1,832,617 |
1.82 |
1977(昭和52) |
1,755,100 |
1.80 |
1978(昭和53) |
1,708,643 |
1.79 |
1979(昭和54) |
1,642,580 |
1.77 |
1980(昭和55) |
1,576,889 |
1.75 |
1981(昭和56) |
1,529,455 |
1.74 |
1982(昭和57) |
1,515,392 |
1.77 |
1983(昭和58) |
1,508,687 |
1.80 |
1984(昭和59) |
1,489,780 |
1.81 |
1985(昭和60) |
1,431,577 |
1.76 |
1986(昭和61) |
1,382,946 |
1.72 |
1987(昭和62) |
1,346,658 |
1.69 |
1988(昭和63) |
1,314,006 |
1.66 |
1989
(昭和64/平成元) |
1,246,802 |
1.57 |
1990(平成2) |
1,221,585 |
1.54 |
1991(平成3) |
1,223,245 |
1.53 |
1992(平成4) |
1,208,989 |
1.50 |
1993(平成5) |
1,188,282 |
1.46 |
1994(平成6) |
1,238,328 |
1.50 |
1995(平成7) |
1,187,064 |
1.42 |
1996(平成8) |
1,206,555 |
1.43 |
1997(平成9) |
1,191,665 |
1.39 |
1998(平成10) |
1,203,147 |
1.38 |
1999(平成11) |
1,177,669 |
1.34 |
2000(平成12) |
1,190,547 |
1.36 |
2001(平成13) |
1,170,662 |
1.33 |
2002(平成14) |
1,153,855 |
1.32 |
2003(平成15) |
1,123,610 |
1.29 |
2004(平成16) |
1,110,721 |
1.29 |
2005(平成17) |
1,062,530 |
1.26 |
2006(平成18) |
1,092,674 |
1.32 |
2007(平成19) |
1,089,818 |
1.34 |
2008(平成20) |
1,091,156 |
1.37 |
2009(平成21) |
1,070,035 |
1.37 |
2010(平成22) |
1,071,304 |
1.39 |
2011(平成23) |
1,050,806 |
1.39 |
2012(平成24) |
1,037,231 |
1.41 |
2013(平成25) |
1,029,816 |
1.43 |
2014(平成26) |
1,003,539 |
1.42 |
2015(平成27) |
1,005,677 |
1.45 |
2016(平成28) |
976,978 |
1.44 |
1947年の4.54をピークに年々低下を続け、2005年には最低値の1.26をたたき出しています。その後少し改善を見せるも、近年では1.4前後をうろうろしている状態です。人口維持に必要な2.07には程遠く、このままでは生まれるより死亡する人数のほうが上回ってしまい、結果的に日本の人口が減少していくことを意味します。
このまま人口が減り続けるようでは国家の危機。この状況を鑑み、1994年に「今後の子育て支援のための施策の基本的な方向性について」(エンゼルプラン)が打ち出され、1999年には、「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画」(新エンゼルプラン)を策定されています。その後、2004年には「少子化社会対策大網に基づく具体的な実施計画について」(こども・子育て応援プラン)が施策されています。
その他子育て支援の流れは、以下のような変遷をとげています。
「少子化問題と子育て支援の変遷」表を表示
2003(平成15)年7月 |
次世代育成支援対策推進法 (2003(平成15)年7月~) |
2003(平成15)年9月 |
少子化社会対策基本法 (2003(平成15)年9月~) |
2004(平成16)年12月 |
子ども・子育て応援プラン (2005(平成17)年度~2009(平成21)年度) |
2006(平成18)年6月 |
「新しい少子化対策について」 (2006(平成18)年6月~2007(平成19)年度) |
2007(平成19)年12月 |
「子どもと家族を応援する日本」重点戦略 (2007(平成19)年12月~) |
2010(平成22)年1月 |
少子化社会対策大綱(子ども・子育てビジョン)の策定 (2010(平成22)年1月~2015(平成27)年3月) |
2010(平成22)年1月 |
子ども・子育て支援新制度本格施行までの経過 (2010(平成22)年1月~2015(平成27)年3月) |
2013(平成25)年4月 |
待機児童の解消に向けた取組 (2013(平成25)年4月~) |
2013(平成25)年6月 |
少子化危機突破のための緊急対策 (2013(平成25)年6月~) |
2014(平成26)年1月 |
「選択する未来」委員会 (2014(平成26)年1月~11月) |
2014(平成26)年7月 |
放課後子ども総合プランの策定 (2014(平成26)年7月~) |
2014(平成26)年9月 |
地方創生の取組 (2014(平成26)年9月~) |
2015(平成27)年3月 |
新たな少子化社会対策大綱の策定と推進 (2015(平成27)年3月~) |
2015(平成27)年4月 |
子ども・子育て支援新制度の施行 (2015(平成27)年4月~) |
2015(平成27)年4月 |
子ども・子育て本部の設置 (2015(平成27)年4月~) |
2016(平成28)年4月 |
子ども・子育て支援法の改正 (2016(平成28)年4月~) |
2016(平成28)年6月 |
ニッポン一億総活躍プランの策定 (2016(平成28)年6月~) |
2017(平成29)年3月 |
「働き方改革実行計画」の策定 (2017(平成29)年3月~) |
人口の減少から少子化問題が浮き彫りになり、働き方や子育て支援に関する様々な法律が改定されていきました。合計特殊出生率は日本の法律や政治にも影響をきたす重要な数字であることがわかります。
参考
内閣府:国の取り組み「これまでの少子化対策の取組」
世界の合計特殊出生率はどうなっているの?
日本では低下し続けている合計特殊出生率。他国ではどうなっているんでしょうか。

By Supaman89 [CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0) or GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html)], from Wikimedia Commons
画像引用:
ウィキペディア「合計特殊出生率」
上の画像、左下の色別に分けられた数字が各国の合計特殊出生率。先進国は青色で表示されている国が多く、合計特殊出生率が低いことがわかります。
「他国の合計特殊出生率:上位順」表を表示
国及び地域 |
特殊合計出生率 |
(2005-2010) |
世界平均 |
2.56 |
ニジェール |
7.15 |
アフガニスタン |
6.63 |
東ティモール |
6.53 |
ソマリア |
6.4 |
ウガンダ |
6.38 |
チャド |
6.2 |
コンゴ民主共和国 |
6.07 |
ブルキナファソ |
5.94 |
ザンビア |
5.87 |
アンゴラ |
5.79 |
ギニアビサウ |
5.73 |
マラウイ |
5.59 |
タンザニア |
5.58 |
マリ共和国 |
5.49 |
ベナン |
5.48 |
ギニア |
5.45 |
ルワンダ |
5.43 |
エチオピア |
5.38 |
赤道ギニア |
5.36 |
ナイジェリア |
5.32 |
イエメン |
5.3 |
シエラレオネ |
5.22 |
リベリア |
5.14 |
モザンビーク |
5.11 |
ガンビア |
5.1 |
パレスチナ |
5.09 |
セネガル |
5.04 |
ケニア |
4.96 |
中央アフリカ共和国 |
4.85 |
マダガスカル |
4.78 |
エリトリア |
4.68 |
カメルーン |
4.67 |
ブルンジ |
4.66 |
コートジボワール |
4.65 |
モーリタニア |
4.52 |
コンゴ共和国 |
4.41 |
ガーナ |
4.31 |
トーゴ |
4.3 |
スーダン |
4.23 |
グアテマラ |
4.15 |
イラク |
4.11 |
パプアニューギニア |
4.1 |
トンガ |
4.05 |
パキスタン |
4 |
バヌアツ |
4 |
コモロ |
4 |
サモア |
3.99 |
ジブチ |
3.95 |
ソロモン諸島 |
3.92 |
サントメ・プリンシペ |
3.85 |
ミクロネシア連邦 |
3.62 |
スワジランド |
3.57 |
ハイチ |
3.55 |
ラオス |
3.54 |
ボリビア |
3.5 |
ジンバブエ |
3.47 |
タジキスタン |
3.45 |
ナミビア |
3.4 |
レソト |
3.37 |
ガボン |
3.35 |
ホンジュラス |
3.31 |
シリア |
3.29 |
フランス領ギアナ |
3.27 |
サウジアラビア |
3.17 |
マヨット(フランス) |
3.15 |
ヨルダン |
3.13 |
フィリピン |
3.11 |
オマーン |
3.09 |
パラグアイ |
3.08 |
カンボジア |
2.96 |
ネパール |
2.94 |
ベリーズ |
2.94 |
ボツワナ |
2.9 |
エジプト |
2.89 |
イスラエル |
2.81 |
カーボベルデ |
2.76 |
インド |
2.76 |
ニカラグア |
2.76 |
フィジー |
2.75 |
リビア |
2.72 |
西サハラ |
2.7 |
ブータン |
2.68 |
ドミニカ共和国 |
2.67 |
ペルー |
2.6 |
マレーシア |
2.58 |
エクアドル |
2.58 |
キルギス |
2.56 |
パナマ |
2.56 |
南アフリカ共和国 |
2.55 |
ベネズエラ |
2.55 |
グアム |
2.54 |
トルクメニスタン |
2.5 |
コロンビア |
2.45 |
レユニオン |
2.44 |
カタール |
2.43 |
スリナム |
2.42 |
ジャマイカ |
2.4 |
アルジェリア |
2.38 |
モロッコ |
2.38 |
バングラデシュ |
2.36 |
エルサルバドル |
2.35 |
ガイアナ |
2.33 |
スリランカ |
2.33 |
ミャンマー |
2.32 |
カザフスタン |
2.31 |
グレナダ |
2.3 |
バーレーン |
2.29 |
ウズベキスタン |
2.29 |
アルゼンチン |
2.25 |
メキシコ |
2.21 |
フランス領ポリネシア |
2.21 |
インドネシア |
2.19 |
クウェート |
2.18 |
アゼルバイジャン |
2.16 |
アメリカ領ヴァージン諸島 |
2.15 |
セントビンセント・グレナディーン |
2.13 |
トルコ |
2.13 |
ウルグアイ |
2.12 |
グアドループ |
2.11 |
ブルネイ |
2.11 |
アイスランド |
2.1 |
ニューカレドニア |
2.1 |
アメリカ合衆国 |
2.09 |
ベトナム |
2.08 |
モルディブ |
2.06 |
セントルシア |
2.05 |
バハマ |
2.02 |
モンゴル |
2.02 |
ニュージーランド |
2.02 |
オランダ領アンティル |
1.98 |
コスタリカ |
1.96 |
アイルランド |
1.96 |
アラブ首長国連邦 |
1.95 |
チリ |
1.94 |
マルティニーク |
1.91 |
ブラジル |
1.9 |
ノルウェー |
1.89 |
フランス |
1.89 |
アルバニア |
1.87 |
スウェーデン |
1.87 |
朝鮮民主主義人民共和国 |
1.86 |
レバノン |
1.86 |
チュニジア |
1.86 |
イギリス |
1.84 |
デンマーク |
1.84 |
オーストラリア |
1.83 |
イラン |
1.83 |
プエルトリコ |
1.83 |
フィンランド |
1.83 |
タイ王国 |
1.81 |
モーリシャス |
1.78 |
ベルギー |
1.77 |
中華人民共和国 |
1.77 |
アルバ |
1.74 |
オランダ |
1.74 |
アルメニア |
1.74 |
ルクセンブルク |
1.66 |
エストニア |
1.64 |
モンテネグロ |
1.64 |
トリニダード・トバゴ |
1.64 |
セルビア |
1.62 |
ジョージア (国) |
1.58 |
カナダ |
1.57 |
バルバドス |
1.53 |
キプロス |
1.52 |
モルドバ |
1.5 |
キューバ |
1.5 |
スイス |
1.45 |
マケドニア共和国 |
1.44 |
スペイン |
1.43 |
クロアチア |
1.42 |
ジャージー島 |
1.42 |
チェコ |
1.41 |
ブルガリア |
1.4 |
ラトビア |
1.4 |
オーストリア |
1.38 |
ポルトガル |
1.38 |
ギリシャ |
1.38 |
イタリア |
1.38 |
ロシア |
1.37 |
スロベニア |
1.36 |
ハンガリー |
1.35 |
リトアニア |
1.34 |
ドイツ |
1.32 |
ルーマニア |
1.32 |
ウクライナ |
1.31 |
ベラルーシ |
1.28 |
スロバキア |
1.28 |
シンガポール |
1.27 |
日本 |
1.27 |
ポーランド |
1.27 |
マルタ |
1.26 |
大韓民国 |
1.22 |
ボスニア・ヘルツェゴビナ |
1.21 |
香港 |
1.02 |
マカオ |
0.95 |
情報参考:ウィキペディア「国の合計特殊出生率」
一見、発展途上国の合計特殊出生率が高く人口の増加がうかがえるデータですが、実際アフリカなど発展途上国では合計特殊出生率は高いものの、貧困等が原因で衛生状態や栄養状態が悪く、乳児死亡率も高い問題もあります。先進国では乳児死亡率が低く、合計特殊出生率も低い特徴があります。ノルウェーやスウェーデンなど、福利厚生や福祉が充実している国でも、合計特殊出生率は2を超えていません。日本は世界の中でも、圧倒的に合計特殊出生率が低い国でもあります。
試験でおさえておきたい「合計特殊出生率」のポイント
保育士試験はもちろん、合計特殊出生率は看護師試験や保健師試験など、医療・福祉分野では必ずと言っていいほど試験範囲になる項目です。合計特殊出生率の試験対策をするにあたり、以下の項目は必ず理解しておくようにしておきましょう。
定義
合計特殊出生率の定義「一人の女性が一生のうちに出産する子どもの予測数」であることは理解しておきましょう。
合計特殊出生率の目標
合計特殊出生率はいくらあれば国は正常に人口を保つことができるのか。人口を維持していくためには、2.07の合計特殊出生率が必要とされています。2.07以下である場合、人工は減り続け、国として縮小していくことになります。
近年の傾向
合計特殊出生率は、近年どれくらいの数値で経過しているのか。最新の状態を理解しているかどうかは、試験で問われやすい部分でもあるので、直近10年くらいの数字の動きは理解しておきましょう。
世界との比較
発展途上国と先進国の合計特殊出生率の違いや、乳児死亡率など人口に影響するデータについては理解しておきましょう。また世界からみた日本の合計特殊出生率、人口変遷の特徴なども重要です。