ボウルビィとは、子どもは一定の養育者と親密な関係を維持しなければ、後々社会的・心理的な部分で問題が起こりうる、という愛着形成の必要性について理論をたてた医学者です。近年の保育士試験では、ボウルビィの愛着形成について、例年のごとく問題が出題されています。ボウルビィは保育士試験を受けるにあたり、理解必須な項目です。この記事では、ボウルビィの愛着理論について解説しています。
ボウルビィの愛着理論とは
ボウルビィの愛着理論とは、子どもが生まれてからひととの関わりを通して習得していく「愛着」について唱えた理論です。愛着形成には段階と発生する時期があります。各段階によって愛着を持つ対象と行動が異なります。
段階 | 発生時期 | 愛着行動の対象 | 愛着行動 |
第1段階 | 出生~12週 | 特定の愛着を持つ対象はなく、誰にでも興味を持つ段階。 | 定位・信号 |
第2段階 | 12週~6か月 | 特定の1人、及び数人。 | 定位・信号 |
第3段階 | 6か月~2.3歳 | 特定のひとへの愛着が強まる。見知らぬ人への警戒、不安が生じる。 | 発信ならびに動作の手段による接近 |
第4段階 | 3歳ごろ~ | 特別な愛着を持つ他者と、2次的人物の区別。 | 認知的接近 |
愛着行動の種類:定位・信号・認知とは
定位とは、養育者を目で追う、養育者の声を聞こうとする行動。
信号とは、人にシグナルを送るために微笑んだり、声をあげたり、手を上げて合図したりする行動。
接近とは、人に近づいてしがみついたり、後追いする等の行動。
第1段階:出生~12週・・定位・信号
特定のひとに愛着はなく、周囲のひとみんなに興味を持つときです。追視したり、手を伸ばしたり、喃語で話しかけて、信号を送ります。
第2段階:12週~6ヶ月・・定位・信号
この時期は、接触頻度の高い特定の人物(母親等)に対し、関心を示すようになります。特定の相手に、結びつきが出来てきます。定位・信号は、主に母性的人物に対し親密に働くようになります。
第3段階:6ヶ月~2.3歳・・発信ならびに動作の手段による接近
特定のひと(母親であることが多い)に対する愛着が強くなってきます。同時に、知っているひと、そうでないひとを区別するようになります。知らないひとが近づくと、不安を覚え警戒したり、泣いて嫌がったりします。これが、人見知りの始まりです。人見知りは7~8か月から激しくなってきます。特定の愛着を持つ人を安全基地とし、外界のいろんなものに興味を持ちながら探索し、不安があればすぐ安全地帯である母親のところへ帰ってきます。
特定のひとがいなくなると、赤ちゃんはパニック状態になり、「ママ!ママ!」と叫んだり、泣いたりします。
第4段階:3歳ごろ~・・認知的接近
3歳を過ぎると、母親を安全地帯としながら活動範囲を広げていきます。乳児は、安心できる存在が近くにいることで、自分の世界を拡大していけるのです。
認知能力があがってくると、徐々に母親が近くにいなくても情緒的に安定してくるようになります。母親を自分とは違う独立した人であると認識し、その行動や目的も予測できるようになるため、目の前から離れても急激に不安になったりしないわけです。
今目の前からいなくなったけど、トイレにいっているだけ。洗濯物をほしているだけ。相手の行動も理解できる認知力があがることで、安心を維持できます。この状態を目標修正的協調性が形成される、と言います。
母元を離れて遊びに行って、戻ってくる。それを繰り返しながら子どもは徐々に愛着のある対象から自立していきます。愛着の対象から自立するこの時期を移行期といい、特に不安がつよくなったときに愛着を示すぬいぐるみや毛布、タオルなどを「移行対象」と言います。
愛着形成がうまくいかないとき
内的ワーキングモデルとは
発達初期における愛着のある相手との関わりは、その後の人とのかかわり方や信頼関係の構築、外界に対する理解など、その子どもの成長に大きく影響を及ぼします。幼少期の愛着がある相手との関わりから、内的ワーキングモデルが形成されます。内的ワーキングモデルとは、愛着対象との具体的な経験から得られる触れ合い、愛着対象の情緒的な対応などの表象モデルのことです。幼少期に愛着対象から得る愛着パターンが、生涯にわたり一定の安定性を持つと考えられています。
母性はく奪(マターナル・デプリペーション)とホスピタリズム
愛着形成が阻害されている状態を母性はく奪(マターナル・デプリペーション)と言います。マターナルデプリペーションが原因で心身に影響がでることを、以前はホスピタリズム(施設病)と呼んでいました。家庭で育てられていても育児放棄や虐待等から、マターナルデプリペーションの状態に陥いり、心身の発達に影響をきたすこともあります。近年では入院や養護施設に入所することが直接の原因ではないため、ホスピタリズムと呼ばれることは少なくなり、マターナルデプリペーションと呼ばれることが
参考