平成30年の後期保育士試験が終わり、合否発送が開始。11月26日には公式解答が発表された。
9科目のなかでも、大手保育士試験対策業者の解答割れが3問起きていてた「保育の心理学」。
SNS上では、
- 「保育の心理学」、速報と採点がだいぶ違う!
- 「保育の心理学」、採点ミス?
等の声が上がっていた。
発表されて公式解答では、ユーキャンやキャリアステーション等大手業者も解けなかった出題「問13」が発覚。詳細を解説いく。
問13「中年期の危機、発達課題の問題」
問13では、中年期の危機や特徴についての問いがある。
文中では「中年期は人生の最盛期と捉えられてきたが、1980年代以降では中年期に大きな変化が生じるという見方が受け入れられるようになっている。」とあり、その例として「ライフサイクル」をあげている。解答ではこの一文の表現が×になっている。
だが、中年期危機を論じたエリクソンが、その原点になる「心理社会的発達理論」が日本で出版されたのが1973年以降。それをふまえると、中年以降にも心理的変化があると世間で認識されるようになるのは、少なからず1980年以降と捉えられ、解答が〇でもおかしくない。
いつから中年期危機などの、「中年期の変化」が世間でうけいれられるようになったのか。それは測れるものではないし、少なからず〇×で答えられる問題ではない。
調べる限り、上記問が×になる根拠はどこにも見当たらず・・。
また、問題文の続きに、「厚生労働省の平成27年の調査によると、パートナーと親密な関係を築いてこなかったために、同居年数の20年以上の別居が急増している」という文に対する〇×問題があるが、厚生労働省にそういった文書は見当たらなかった。
上記文章の答えは×。
大手業者ユーキャン、キャリアステーション等数社もこの問題は正答できなかったが、保育士養成協議会からは「不適切問題ではない」とのこと。
ターンテイキングか、会話か
問8では、
文中、「乳児のサインに応えることが保育者の喜びともなることであり、それは快感情の共有であり、(D)の原型である。」という問いに対し、公式解答は「会話」になっている。
だが選択肢に「ターンテイキング」もあり、文章の流れからしてどちらでも当てはまる。多くの速報では「ターンテイキング」を解答としていた。
会話とは、複数以上の人が言語を通して意思を伝え合う行動。会話は喜びや快だけを表現するものではなく、怒りや不快感を表現するツールでもある。会話は言語ありきで成り立つ行動であり、乳児のサインは言語ではないため、会話ではないと判断もできる。
ターンテイキングとは、情報のやり取りの順番のこと。
母子健康協会の表記には以下のようなものがある。
言葉が始まる前のコミュニケーションというのは、特に、人とどういうタイミングでやりとりをしたらいいのかということを、たくさん学んでいるということです。
~中略~
ほっとしたところで、大人がリラックスしたところで、子どもは正面からかかわってもらう、楽しいやりとりの中で、ターンテイキングといわれるような、人とのやりとりの順番などを学んでいきます。やりとりの順番というのは、会話に参加していくときの基礎になっていきます。
引用:母子健康協会
問いは、泣いている赤ちゃんと保育者の対応についての問題。泣いている赤ちゃんには言語はないが、泣く、世話をしてもらうという保育者とのやりとりを経験して、コミュニケーションを身に着けていく。
文章の流れから見ると、人とのやりとりの順番を示すターンテイキングが正答に見える。だが、公式の正答は言語でコミュニケーションをとる「会話」が正解になっていた。
こちらも、保育士養成協議会からは「不適切問題ではない」とのこと。
大手速報の解答割れ3問、解けない問題が1問
保育の心理学では、保育士試験を専門に扱う教育業者でも解けない、もしくは解答割れした問題が4問あった。
どちらともとれるようなあいまいな表現な質問も多く、試験というより、運の要素が強い内容が多い。出題内容に問題はないのだろうか?これだけ意見が割れる問題が不適切問題でないなら、なにが適切で不適切かわからない。
明らかに自分の勉強不足で答えられない問題は仕方ないが、どっちともとれるような出題をいくつもされるのは受験者に不利すぎる。
保育士試験では平成30年前期試験でも不適切問題が指摘された。速報で解答が分かれるほど、難解な問題である。問い合わせが殺到し、最終的には協会も問題を見直すこととなった。
受験者が真剣に挑む試験だからこそ、もう少し出題内容を見直しや改善を願いたい。